Cocktails on the bar in the Yacht Club on board Cunard's Queen Victoria
Grey silhouette of a person's head and shoulders

シャロン パーソンズ

著者

グラスに宿るアート

キュナードのチーフ・ミクソロジスト、クラウディア・カロッツィとともに、クラシックカクテルのトレンドとクラフトの世界を探ります。

カクテルの世界はいま、どんな様子ですか?

 

私は、今こそバーテンディングの歴史の中で最も素晴らしいカクテル時代だと感じています。1970年代から1990年代にかけては、量や派手な演出が重視され、品質が犠牲になっていました。私はその時代を「カクテルの暗黒時代」と呼んでいます。現在では、素材の質やバランス、そして美しく丁寧なプレゼンテーションに、より大きな関心が寄せられています。

Cocktails photographed on board Queen Elizabeth in Southampton.
Picture date: Thursday May 24, 2018.
Photograph by Christopher Ison ©
07544044177
chris@christopherison.com
www.christopherison.com

では、この復活の背景には何があるのでしょうか?

 

お客様のニーズや期待が変化したことが大きいですね。今の私たちは、より洗練された味覚を持ち、品質と本物志向を求めるようになっています。

また、昔のレシピや失われた技法に対する新たな敬意も生まれています。バーヒストリアンの研究や、インターネットを通じて手に入るビンテージのカクテルブックのおかげで、そうした知識が再発見され、再評価されているのです。

 

今、こうしたカクテルが魅力的に映る理由は?

最新のトレンドは、古典的なレシピに影響を受けつつも、スピリッツのインフュージョン(香りづけ)、自家製の発酵素材、手作りのシロップやフレーバーウォーターなどを取り入れて、現代的にアップデートされています。まるで料理とバーテンダー技術が融合したような、魔法のような世界が広がっているんです。これこそが「クラフト・カクテル」の真骨頂ですね。

 

バーで注目のスターは?

最もエキサイティングな動きのひとつが、ジンのルネサンス(再興)です。ジュニパーなどのボタニカル(植物由来の香草)をベースにしたジンは、非常に多様性があり、使い勝手も抜群です。実は、歴史的なカクテルレシピの多くはジンをベースにしていて、そこにフォーティファイドワイン(酒精強化ワイン)やヴェルモット、ハーブ系のリキュールなどが組み合わされているんですよ。

The Pickering's Gin tap in use at the Gin and Fizz Bar on board Cunard's Queen Victoria.

ノンアルコールカクテルの最新トレンドは?

低アルコールやノンアルコールのドリンクへの関心が高まっています。たとえば「Seedlip(シードリップ)」のような高品質なノンアルコールスピリッツの登場により、これまで甘いフルーツ系や乳製品ベースに限られていたノンアルコールカクテルの選択肢が、大きく広がりました。

今では、バーテンダーが論理的なカクテル構成に基づいて、アルコール入りのカクテルと同じくらい複雑でエレガント、そして個性的なレシピを創り出すことができます。「キュナード・ビー・ダズルド(Cunard Bee-Dazzled)」は、Seedlip Spice 94 を使った素晴らしい一例です。

 

最後にひと言お願いします。

私たちは過去からインスピレーションを得て、さまざまな魅力的なブレンドを生み出していますが、責任あるバーテンダーとして、持続可能性を含む長期的な視点も忘れてはなりません。キュナードではこの責任を真摯に受け止めており、船内すべてのバーでその姿勢が実践されています。

私たちは、ドリンクの素材を責任を持って調達し、船の厳格なリサイクルポリシーを遵守しています。また、プラスチック製ストローの使用をやめるなど、環境への配慮を徹底しながら、卓越したドリンク体験を提供しています。

フード&ドリンク その他の記事